横井醸造(後編):「酒粕」が与える誤解‐食品表示と販路拡大が課題
【連載コラム】日本の知恵と技術でハラール対応!
Vol.1 お酢・みりん風調味料編 ~横井醸造工業株式会社~ 後編
「酒粕」が与える誤解‐食品表示と販路拡大が課題
(笠岡)ハラール製品の製造ラインは他の商品と別なのでしょうか?
(横井)ハラール製品を作る時でも同じラインを使っています。ただ、最終的に調合する時には、通常の商品とハラール商品を別々にしています。また、ハラール製品を作る時だけは清掃頻度を上げています。
(笠岡)清掃頻度も認証を得るには求められるのでしょうか?
(横井)最初は、工場内でどんな原材料を使っているのか聞かれました。でも、弊社では特に問題になる原材料はなく、清掃頻度をあげることで認証が取れました。工場や業態によって異なるようです。また、認証機関によっても若干基準は異なるようです。
(笠岡)主力商品の赤酢は、ハラール認証を取得しないのでしょうか?
(横井)いや~、原料に酒粕を使っているので、難しいんじゃないでしょうか。
(笠岡)そんなことないと思いますよ。たしかに酒粕にはアルコール成分が含まれていますが、横井醸造さんの赤酢の場合、原料となる熟成させた酒粕にはアルコール成分が含まれていませんし、それにアルコール添加もされていませんから。
(横井)そうですか。
(笠岡)原材料名には酒粕と書かないといけないでしょうから、その「酒」という文字が気になるかもしれませんけれど、中身としては問題ない。
でも、もったいないですよね。原材料名の表示で誤解を与えてしまうのは。
日本製調味料を使って「美味しい和食」を食べてほしい
(笠岡)ハラール認証を取って、反響はいかがでしょうか。
(横井)実際に現場で動いていると、今までハラール認証のお酢がなかったので、有難いと言われることが多いです。でも、まだ皆さん様子見という感じでしょうか。
今までと同じ味でハラール対応が出来ますよ、というのがうちのお酢のウリ。ぜひ今後は販路を拡大したいです。
(笠岡)今後は一般消費者向けにも販売するのですか?
(横井)まずは業務用から始めていって、ニーズがあればもっと小さいサイズにして一般消費者向けに売れたらなとは考えています。
(笠岡)最後に一言メッセージをお願いします。
(横井)日本に来られたムスリムの方、住んでいらっしゃるムスリムの方に、美味しい寿司や和食を食べてもらいたいと思い、これらの調味料を作りました。
一人でも多くのムスリムの方に美味しい和食を食べてもらえるように、1軒でも多くのレストランに弊社のお酢とみりん風調味料を届けられるよう、頑張ります。
(笠岡)ありがとうございました。
お酢もみりんも発酵食品です。酵母などの微生物が原料を食べてうま味成分のアミノ酸などを排泄します。同時に炭酸ガスやアルコールも発生します。とても自然なアルコールです。これが味に深みやまろやかさを与えているんですね。そんなアルコールを極力減らす努力はすごいですね。お酢の会社だけあって米酢を代用する。驚きの発想です。
平成25年6月に食品表示法が施行され、より分かりやすい表示制度になりました。でも今回の横井さんの場合、「酒粕」のように、「酒」という言葉のイメージが強烈なために、食品成分の中身を誤解させてしまうなんて。。。ハラール認証を取得する過程で、これまで気づかなかった食品表示の問題点が見えてきた気がします。大事なことに気付かされる、とてもよい取材になりました。
(文責:文教大 教授 笠岡誠一)
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